ケビン・ルーニー独占インタビュー(by Fightnews)

ケビン・ルーニーは伝説のカス(Cus D'Amato)に”ファイター”として、又引退後も”トレーナー”としてもコーチされた男です。 また、カスの死後、マイクタイソンのコーチとして引継ぎ、タイソンを史上最年少世界ヘビー級チャンピオンに育てた男です。

カス氏が1985年の11月に亡くなった翌年、タイソンは20歳という史上最年少世界ヘビー級チャンピオンになります。 又これは、トレーナーであったケビン・ルーニー氏を、世界チャンプを育てた”史上最年少トレーナー”という事にもつながったのです。


ジュニアミドル級レオナード・ピアーと
トレーナーのルーニー氏

ケビン氏の指導の元、タイソンは24勝無敗(うち20回KO)で、WBA,WBC,IBFのそれぞれの連盟を総なめし、全てチャンピオンに輝きました。 その破竹の勢いで突き進んだタイソンと戦った選手とは、ジェームス・スミス、トニー・タッカー、ラリー・ホームズ、トニー・タブス、マイケル・スピンクス という名だたるファイターです。
1988年にタイソンがマイケル・スピンクスを1ラウンド目にノックアウトした後、ケビン・ルーニーはトレーナーとして解雇されます。  そこからタイソンの人生は、スキャンダルやトラブル続きのキリモミ状態に突入します。

最近確かな情報筋の話しでは、タイソン(50勝4敗44KO)がアリゾナ州フィニックス市で軽い自主トレを始めたとの事です。 また、数ヶ月後に試合を控えています。
今のところタイソンはトレーナーを雇っていません。

今回ケビン・ルーニー氏との独占取材をしたファイトニュースは、タイソンについて意見を求めました。

○タイソンは随分と現役からブランクがありますが、コンディションをかつての様な状態に戻すのは難しい事ですか?
そう難しい事じゃないと思うよ。もしランニングを続けてシェイプした状態であるなら、問題はないね。 彼は長年そうやってきたのだから、元の状態に戻るのは、丁度電気のスイッチを入れる様なものだろう。 
そりゃマイクは20歳や21歳の頃と同じ状態になるのは無理だろうが、コンディションを整えて精神的にも準備万全なら、相手にとって手ごわいファイターになるだろう。

○その後タイソンはあなたに、トレーナーとして就いてくれるよう頼んだ事がありますか?
いいや、お互いコミュニケーションをとっていない。 電話で一度だけ会話した事はある。
たあいもない内容で、「元気か?・・・」みたいな感じだった。
去年マイクが俺の住んでいるキャッツスキル市を訪れて、俺を探していたという噂を聞いた事がある。 でも彼は俺が住んでいる場所を知っているんだ。 今も昔も同じ所に俺の家がある。 それを知ってて俺のところに来ないというのは・・・ んんんん・・・分からん。
俺は思うんだが、人は自分を最初にダンスに連れて行ってくれた人の事を覚えていると思うんだ。
マイクと俺は、一緒にボクシングというスポーツで偉業を成し遂げた長い歴史がある。
そこから逃げたりしない筈だ・・・。

○もしタイソンがトレーナーとしてあなたにお願いしたら、どうしますか?
もしマイクが頼むなら・・・、勿論引き受けるよ。 マイクが昔のレベルに戻るよう頑張るまでさ。

○もうかれこれ15年、あなたがタイソンを辞めてから経ちます。 もう今更彼を同じレベルに戻すのは無理では?
いや、そうは思わない。 もし彼が本気になり、一生懸命トレーニングすれば、それは可能だ。
マイクが全盛期、俺は彼に毎日10ラウンドのスパーリングを週5日させた!
毎日が力尽きるまでの戦争だった。 今で言う、「1日やって翌日体を休める」なんてバカげた事してなかった。 偉大なるファイターになるには・・・、スパーリングするしかない。
毎日毎日、来る日も来る日もスパーリングをしなくてはならない。 マイクの場合、試合の2,3日前までそれをやった。
ある時アトランティック市でマイクがスパーリング中、鼻血を出した事がある。  その時ジミー・ヤコブが俺にスパーリングを止めさせるよう言った事がある。  で俺は、「何?! じゃ試合中マイクが鼻血を出したら試合を止めさせるのか?!」とジミーに言ったよ。 そしたらジミーは俺の言う事に納得したよ。
又ラスベガスでスパーリングをしていた時、試合2日前にマイクは目の上をカットしたんだが、切り口は試合中開かなかった。 なぜならマイクは頭を動かし相手の攻撃を交したから。

それから、マイクは俺から離れてから、(試合中)頭を動かさなくなった。 マイクに付いた全てのトレーナーは、俺がやった”マイクの心の中からものを見る”という行為をやっていない。
俺は伝説のトレーナーであるカスにコーチを受けたトレーナーだ。 だからマイクは俺の言う事を信じて疑わなかった。
一般の人は何も知らないが、偉大なるファイターになるには継続なる自己戒律(忍耐)と反復が必要だ。  ボクシングとは、80%が精神的なもので、残りの20%程度が肉体の要因となる。 だから、誰でもエクササイズで引き締まった体を得られても、チャンプにはなれないのだ。

○1988年にあなたがタイソンのトレーナーを辞めてから、ほんの極わずかのトレーナーしかタイソンをやる気にできる者は居ませんでした。 それはどうしてだと思いますか?
マイクはこれらトレーナーを見下していたからだよ。 実際マイクはこれらトレーナー以上にボクシングを知っているし、それを自覚しているんだよ。 マイクが雇ったトレーナー達は何も分かっちゃいない!
マイクは俺に対しては絶対バカなマネはできなかった。 特にボクシングのスタイルとテクニックにかけては、マイクは一切口答えしなかった。 マイクに雇われたトレーナー連中は、マイクに何を言うべきか分からなかったんだよ!  俺はマイクをコーチする様になって、「頭を動かせ!」というのが口癖になったよ。 でもそれをマイクに言うのは、誰にでもできる訳じゃないんだ。 俺がマイクにそれを言う時は、ある種の法則というか、秘訣があるんだ。  カスはとても秘密主義者だったよ。 いつもあの人が選手に対しやっていた事は、あの人の選手の為を思って秘密を貫いたんだ。

○タイソンが自信過剰になり過ぎ、怠慢になっていた事が考えられますか?
いや、全てのファイターは怠慢になりがちだよ。 マイクは俺から離れてから、誰にもガイドしてもらえなくなった。 だから、自分がやりたい事だけをやってきたんだ。 マイクの心の中では、「俺こそが選ばれた男だ」と思ってるだろう。 多くのファイターは皆そうなる傾向にある。 自分が未だひよっ子の頃やってたトレーニングを忘れてしまうんだ。 マイクは誰の意見も聞かない! もしマイクが3キロ5キロ体重を減らす必要があると考えたなら、彼は一生懸命練習して自ら落すよ。 トレーナーとして俺はマイクを”しごく”必要はなかった。 だからこそ、マイクは世界チャンプに史上最年少でなれたのさ。

○今年6月には38歳にタイソンはなります。 ストリートファイターじゃないですから、プロとして何歳まで続けられると思いますか?
多分あと1,2年だろう。 マイクは辞めるべきだと思うね。 俺は思うんだが、マイクは戦う情熱を失っているよ。
一度その情熱を失ったなら、辞めるべきだ。 今のマイクは金の為に戦ってるね。 とは言え、現在ヘビー級には本当に誰も大した奴は居ない。 マイクは未だパンチ力がある。 未だパワーが有るのなら、脅威のファイターとしてヘビー級はいつでもマイクにチャンスを与えるだろう。

○レノックス・ルイース戦について、どう思いますか?
マイクはベストコンディションではなかった。 コンディションを整えていたらルイースをやっつけていただろう。  でも途中でマイクは試合放棄したからね。あの試合は最悪だったね!  ルイースはあの試合中、何も素晴らしい動きが無かった。 たまたま数発のパンチをマイクに当てたところ、マイクに切傷ができ、マイクが試合中断してコーナーに戻ったところ、試合を止めさせちまったんだ。 ちゃんと練習してれば、マイクはルイースを倒す事ができたよ。

○そのファイトでは、随分タイソンはパンチを受けました。 多分タイソンのボクシングキャリアの中で最悪ではなかったですか?
いや! マイクは止めたんだよ! 試合を諦めたんだよ! 大きな金がもらえるから、その腹づもりだったのさ!

○沢山あるでしょうが、あなたさえ驚かせた程のタイソンのベストパンチが決まったファイトを挙げるとすると、どれになりますか?
スピンクス戦のパンチは非常に良かった。マイクはスピンクスのアゴに一発決め、葬ったね。 スピンクスはマイクをビビってたから、予想は付いてたけどね。 でもあの試合でスピンクスは1,300万ドル(15億円弱)を手にし、ボクシングから足を洗ったからね。 そう、トレヴァー・バービック戦のパンチ・・・あれは最高だったね!! マイクはトレヴァーを、たった一発のパンチで3回連続ノックアウトしたからね! ありゃスゲーパンチだった! 最高だったね!

○カス(Cus D'Amato)氏が現在のタイソンの姿を観たら、何と言うでしょう?
まぁ・・・答えるなら2つあるね。 まず一つは、もしカスが現在も生きていたなら、マイクはあんな風になってなかったろう。 2つ目は、カスはマイクに対し、凄く幻滅するだろう。 カスなら、「くそったれ!マイクをちゃんと教育する時間が無かった!」と間違いなく言うだろう。
カスとマイクはほぼ5年間一緒に生活をしたんだ。 マイクがカスに心を許し、信用するのに2年かかっている。 一旦マイクがカスを信用するようになると、そこからアマチュアボクシングで連勝する様になった。  で、マイクがプロ11戦目でカスが亡くなった時、ジミーとビルに、「カスの教えが正しいという事を、皆に証明してやろうじゃないか!」と言ったんだ。 ボクシング界では、カスD'Amatoより優れた教えを持つ者など居やしない! たった一人すら!

○モハメド・アリですらカス氏の教えを求めたと言いますが、本当ですか?
その通り! ジョージ・フォーマンとの対戦の前に、カスのアドバイスを得たんだ。 カスがアリに言ったのは、「ジョージはお前の(受身スタイルの)パンチなど見下している。 だから、試合が始まったら全力でパンチを浴びせまくってやれ!」だった。
 その試合を観れば、最初の2ラウンドでアリはフォーマンに対し、ストレートパンチをガンガン浴びせまくる。 フォーマンの驚きが目に表れてる!  ラウンドの残り30秒前毎に、アリはフォーマンに対し猛パンチを開始する。 で、フォーマンがラウンドを終え、コーナーに戻る毎にセコンドが、「アリはパンチなんかできない!」と言うので、先入観と現実とのギャップが心理作用を生み出したんだ。 カスはそれを知ってたんだ。 結局フォーマンは疲れ切って試合を諦めたような結果になった。
 
○何がマイク・タイソンをホリフィールドの耳を噛ませる事になったと思いますか?

ホリフィールドが頭突きをマイクに対し、し続けたからだと思うよ。 ホリフィールドという選手は、非常に汚いテクニックを使うファイターだ。 その事について誰も指摘しないがね! ホリフィールドは汚いテクニックと戦略を使うのが非常に上手く巧妙な奴だ。 あのジョージ・フォーマンですら、「ホリフィールドは今まで戦った相手の中で、最も汚いテクニックを使うファイターだ」と言った位だ。
マイクとホリフィールドの対戦については、最初ホリフィールドがマイクをロープに弾き飛ばし、跳ね返って来たところにホリフィールドがマイクに頭突きを食らわしたところから始まってたんだ。 それでマイクは顔を切ったんだ。

その後試合中同じ事をホリフィールドが繰り返したんだ。 注意して見なくてはならないが、あの試合はかなり過熱していたんだ。 でも良〜く試合を観てみると、マイクがホリフィールドの耳を噛み切る前に、(頭突きを止めろという)警告としてホリフィールドの耳を軽くかじる行為をマイクはしているんだ。
もちろんマイクがそんな行為に出たのは間違ってるよ。 しかしあの頃やそれ以前では、ああいう違反は良く有ったんだよ。

俺がボクサーとして駆け出しの頃、カスがずるいテクニックで逃げ切る方法を教えてくれたもんだよ。 カスは1920年代のボクサーだから、本に書けない位のずるいテクニックの全てを知ってたよ! 例えばどいう風に相手を掴むや、頭から頭突きをする様に相手に入り込むや、肘を相手のアゴの下に置くや、親指で相手の目を狙うや、下腹部を殴るや、膝で相手の股間を蹴る等だ。 自分がやばい状態に追い込まれたら、こうゆうテクニックで逃げ切れる事ができる。
これらはレフリーにとっても、見分けにくいんだ。 試合は、どちらかが勝者と敗者に決定される戦争だからね。
もちろん試合にはルールが有り、それに従おうとするものだが、ホリフィールドの様なファイターは、これらルールを度々破るタイプだね。

○ホリフィールドのスタイルは、タイソンを攻略する上で最高だと評されたりもしました。 もしあなたがタイソンのコーチなら、どう教えますか?
俺ならマイクに、ホリフィールドの顔めがけて突っ込み、頭をもっと動かせ!と言うね。 頭を動かすスタイルこそ、マイクのファイティングスタイルの基本なんだ。 そうすれば、相手は苦しくなる。 ファイターがパンチを放って空振りすると、慎重になり、同じパンチを出さなくなる。 そうして困惑した時に、頭を動かしているマイクがパンチをお見舞いし、KOとなるんだ。
もし正しいトレーニングをマイクがし、俺がセコンドに付いたなら、ホリフィールドをノックアウトできるよ。  それは疑う余地のない事だ。

○バスター・ダグラスにタイソンは敗れた時、多くのファンはタイソンがマウスピースをリング上で拾おうとする姿は悲しく感じました。 あの試合についてどう思いますか?
俺は別に悲しく感じなかったね。 なぜならああなるのは分かっていたから。 俺が悲しく感じたのは、スピンクス戦の8ヶ月後のマイクの試合を観た時だ。 対戦相手はフランク・ブルノで、マイクの技術レベルが既に退化していたのが観て取れたんだ。  間違いなくマイクはあの時、俺が教えていた時の様なトレーニングをしてなかったよ。 もしブルノがしっかり戦えたなら、あの夜マイクはノックアウトされていたよ。 ブルノはマイクにパンチを浴びせ、ぐらつかせたんだが、その後どうしたら良いか分かってなかったんだよ! あのシーンを観た時、俺は思ったね、マイクがノックアウトされる日は、そう遠くはないと。  それが(マイクの技術レベルの低下が始まっているのが)俺にとっては悲しく感じた時だね。

ダグラス戦については、マイクがリングに上がった姿を観た瞬間、調整できてないと分かったね。 体に脂肪が付いていて、全然引き締まってない。 俺は知ってたよ、試合前夜にパーティーで浮かれて遊んでたんだよ。 ホント彼らは日本に行くと、遊びまくるのが大好きなんだ。  まあ俺の言う事を信じてくれ。 俺はこの試合の1年前に、トニー・タブとの対戦でマイクと一緒に日本に行ったんだ。 でも、その時は試合が終わるまで我慢したんだ。 日本へは飛行機で14時間もかかる長旅だ。 到着したら、マイクはしばらく寝たが、5キロのジョギングの為にマイクを起こしたよ。 その後ジムへ行って一生懸命練習だ。 浮かれて遊ぶ暇も作らなかった。
ダグラス戦の2週間前、マイクの体重が114kgあって、更に14kgの減量をしなくちゃならないという話を聞いた。 だから水も食事もロクに摂ってなかったんだ。

○タイソンのレイプ訴訟について、多くの人はタイソンがハメられたと感じましたが、どう思いますか?
間違いなくマイクは(ドン・キングに)ハメられたね! 大体レイプを訴えられて自分を弁護するのに、会計弁護士を就かせて勝てるか?
あの事件の直ぐ前だが、マイクがドン・キング(プロモーター)の元を離れ、ハロルド・スミスのところに移籍する噂が流れてたんだ。
 それを考慮に入れると・・・大体分かるだろう。

マイクは至上最高のヘビー級ボクサーとして勝ち続ける事が出来ただろう。 100戦100勝だって可能だった!  だがマイクは自分自身を最低な連中で取り囲み、それら連中がマイクの金を使って毎日パーティしてたんだ。
マイクは巨額の金を手に入れていたが、それはジミーとビル(ルーニーの仲間)のお陰だ。 彼等がマイケル・スピンクス戦で、2千万ドル(22億円以上)という当時至上最高のファイトマネーをマイクに提供するよう話を決めたんだ。


マイクタイソン(左)、ドン・キング(右)

日本でトニー・タブ戦の時は、10億円をマイクに提供している。 又マイクは日本でTVコマーシャル出演で、何億円も稼いだ。 その後マイクはロビン・ギブンズと結婚するが、ドン・キングがやってきてマイクをかっさらって行ったんだ。
でもマイクには「カスはこんな事教えてくれなかった!」なんてため口は言わせないぞ。 甘ったれちゃいかん!マイクには最高のチームが就いていたんだ! 自分が最高から最低に転落したからって、ナイーブに犠牲者ぶっちゃいかん!
それはマイク自身が悪いんであって、全てマイク自身の責任だ!

マイクは自分自身も傷付けたし、俺やビルを裏切ってドン・キングのところへも行ってしまった。 でもマイクはキングに酷い目に遭った。  マイクは自分をトップに連れて行ってくれた人達と一緒に居るべきだったんだよ。 でもキングを選び、しくじった。 散々キングに絞り取られたが、マイクはもう少し相手を選ぶべきだったな。
マイクは今ドン・キング相手に100億円の訴訟を起している。 分かるだろう。

記事:(fightnews.comより)2004年4月5日
http://www.fightnews.com/scott160.htm
http://www.tysontalk.com/
写真:tysontalk.com

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