弾よりも速く!

  世界一速い男の

   トレーニング法を完全公開!

 2001年新春特別号

  


 原本執筆:キャロル・ウェバー
 翻訳編集:S&Fマガジン

2007年11月18日設置
累計

本日

真っ青な空、わたアメの様な雲、心地よい風がなびく涼しい西海岸ロサンゼルスの朝です。
既にUCLAのキャンパス内は、授業に向かう生徒達でにぎわっています。 

ドレイク球場内は、朝のジョギングを楽しむ生徒がパラパラと見えますが、こちらはキャンパス内と打って変わり異様に静かです。  それはあたかも何かの到着を待つかのようです・・・

マウリス・グリーン ---- この青年の到着を球場は待っているのです。

マウリスは26歳の時、60メートル走で6.39秒という世界記録を1998年マドリッドで開催された室内ワールド・チャンピオンシップで樹立しています。 その後続いて99年ギリシャで、100m走を9.79という世界記録を樹立したツワモノです。

マウリスはコーチであるジョン・スミスの元、エイト・ボルドン、ジョン・ドゥラモンド、インガー・ミラーという世界トップスプリンターと共に練習をします。
スプリンターはその異常なまでのプライドの高さ故、悪評が絶えません。 その為仲間同士でかなり険悪に競い合っているだろうと思われがちですが、実際にはお互いをかなりいたわり合って練習しているのです。
「お互いが良い結果を出すように助け合っています」というエイト。
「非常に自己啓発に役立っています。 又マウリスとエイトが共に練習しているのを座って見ていると、自分が何をすべきか分かってきます」というのはドゥラモンド。 続いてマウリスはこう言います。 「皆勝つ事が好きなんだ。 その為に努力は惜しまないよ。 皆ここでは自分の目標を持っていて、それに向かってお互い助け合うというものです。 確かに練習中は9秒○○というタイムで競い合うけど、練習が終わればまた元の生活に戻るんだ」と。
マウリスによると、世界トップレベルのスプリンターと練習する利点は、お互いを意識し合う為、自然とレベルアップに繋がるという事だそうです。

スピード、スピード

カンザス州カンザス市で生まれ育ったマウリスは、8歳の頃から走り出したと言います。 マウリスは走るのが、ただただ好きだったそうです。 

「オレは人と競争するのが好きなんだ。 それで負けたら勝つまで挑戦するんだ。 というのは自分が負ける事が信じられないからだ」と話すマウリス。
その後、兄(マウリスは4人兄弟の末っ子)が高校の陸上競技で記録を作るのを見、彼の心に火が点きます。 
「いつも俺の兄貴は俺にとって憧れだっただけに、取り敢えず兄の記録を破る事さえ出来れば良かったんだ。 ただそれだけの思いで夢中になっていた」と話すマウリス。

実際に彼が自分の運命を悟るのは、高校を卒業した後、93年室内ワールド・チャンピオン大会に参加し、4位に入賞した時の事でした。 その時マウリスはこう思ったそうです。「ココに来ている奴等は、それなりに練習を積んできた者だから、そいつ等を相手に練習を殆どしてない(高校卒業したばかりの)俺が4位を獲れたという事は、本気で練習すればトップに立てるだろう!」と。

マウリスのコーチが最初に目を付けたのは、彼の意思だったそうです。 初めてマウリスを見た時の感想を、コーチはこう語りました。 「最初ヤツを見た時は、こいつなら世界大会で優勝できると思ったよ。 先ず彼の歩き方一つとっても違った。 風貌は今でも変わらない。 ヤツは高校出たてにも関らず、自分は今すぐにでも世界チャンピオンと競技すべきだと考えていたんだ」と。

そしてマウリス自身もスミスコーチを見て、”この人だ”と直感したそうです。 
その後1996年のオリンピック選考に落選し、決意を決め、着る服だけを1つのカバンに詰め、カンザス州からカリフォルニアのUCLA大学に車で向かったのでした。
文字通りそこにあったのは、”バッグ1つと胸一杯の夢”だけだったのです。

走る哲学 

スミスコーチは、マウリスをコーチするにあたり、肉体面のみでなく、精神面でも世界トップ競技者であるべく心構えを教えたのでした。 またそれがスミスコーチのポリシーでもありました。
スミス氏はこの事についてこう言います。 「マウリスが疲れたと洩らした時は、アレ?チャンピオンに成りたいんじゃ
なかったっけ?と言ったものです。 また夜更かしやパーティをしたら、ネチネチ忠告せず、サラリと”チャンピオンに
成る者がする事ではない”と一言いいます。 それだけで充分メッセージは通じています」と。

スミスコーチの成功の影には、独自の哲学が有るのです。 その哲学とは、”かしこく加速と付き合う”というものです。  スミス氏曰く、「心と体は加速という名の”革命”に一緒に弾みます。 走行中、心は貪欲に次ぎの次元のスピードを求める一方、客観的に加速と共に自分の体にどの様な変化が起こっているか把握する事で、常にバランスを失わないように努めなければならないのです。 さもなくば、怪我をします」

筋肉マシーン

スミス氏によると、短距離走者は長距離走者と比べ、遥かに筋肉が必要だと言います。 そこでマウリスをコーチするにあたり、早速ウエイトトレーニングをさせ、筋肉増強を図るのです。
「走行距離が短ければ短い程、筋肉がより必要となってきます」と、スミス氏。
(マウリスがスミス氏の元に来た当初、体重は70kgでしたが、現在は筋肉で締まった状態で78kgを維持しています)
ウエイトトレーニングを行うのは、走る哲学と同様”かしこくトレーニングする”事です。
「ウエイトトレーニングをする目的の一つは、筋肉をコントロールする神経を鍛える為です。 筋肉を使う事で疲れてコントロールを失いますが、それを克服するためにトレーニングをするのです。 そしてトレーニングは、重過ぎないウエイトで爆発的に力を発揮するやり方をします」と説明するスミス氏。 実際筋肉増強は、下半身のみならず、上半身の筋肉も、体を安定して前に進める上で必要と言います。

ウエイトトレーニングのやり方は、全て競技能力を向上させる為だけに特別なプログラムが立てられています。
例えばスクワットを例にあげると、しゃがみ込んだ時に3〜5秒停止し、その後勢い良く立ち上がるというものです。  これは短距離走でスタート時に、ピストルの音と同時に爆発的にダッシュするのを真似ているのです。 

では「ウエイトトレーニングの短所は?」とマウリスに尋ねると、「筋肉痛」と答えました。
「ウエイトは、筋肉を破壊するから、1日の休養が必要なんだ」との事。
マウリスにとってその休養とは、水曜日(ウエイトをしない日)と、日曜日(休日)です。 因みに試合1〜2週間前からウエイトトレーニングを減らし始め、その分技術面での練習に打ち込み始めます。

トップスプリンターの1日

スミスコーチは1週間のトレーニングプログラムを立てています。 
先ず朝11時30分にウエイトトレーニングから開始します。 トレーニングを1時間程こなした後、30分のブレイク。 そして競技場のトラックでの2時間にわたる走る練習です。 それが終るとマッサージ等で体をほぐします。  驚くのは更にです。 更にマウリスは夜自分でトレーニングジムに向かい、ダンベルを使って細かな筋肉を鍛えるのです。
毎日のトレーニング内容は、スミスコーチがマウリスの体調を考慮に入れ調整します。


次ページにトレーニング法が続く・・・

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